宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

menu

宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

第一章 記憶の始まり2

 めまいを感じ、桂は立ち止まって息を整えた。
夕刻になり、暑さは和らいだもののまだまだ蒸し暑い。そしてセッションの好転反応なのかだるく、歩くとすぐに軽い目眩がするのだ。
電車に乗る前に少し休もうと近くのカフェに入り、オレンジジュースを注文すると桂は携帯を取り出した。
-残業で少し遅れます。晩御飯は作るけど翔太が帰ってきたら冷凍庫にピザがあるのでチンしてあげて-
夫に宛てたメールだった。
セッションは思いのほか時間を取り、サロンを出たのはもう6時近かった。家までは電車と歩きで1時間はかかるので、いつもより帰りが遅くなる。
滅多に残業のない会社だが、今までもたまに残業することがあったから夫にはばれないだろう。
中学生の息子、翔太がお腹を空かして帰ってくるのが気掛かりだが、夫にまかせよう。
桂は冷えたオレンジジュースをゆっくりと飲み、渇いた喉を潤した。
重かった頭が少しだけすっきりする。オレンジジュースの酸味とさわやかさが、心まで潤していくようだった。
今日のセッション…なんだったのだろう?
桂はセッション中の出来事を思い出そうとして、軽く頭を振った。
どうかしている。
こんなことはありえない。
セッションしてくれた裕美も、あまりの内容に唖然としていたではないか。
あれは私の妄想なんだわ。
想像力が豊かすぎるのよ、きっと…
桂は、他の人からみておかしく思われないようにそっと首筋を伸ばして肩を回してみた。
がちこちに凝っているのが感じられる。
退行催眠セッションで、明らかに体中が緊張したようだった。
決して恐怖はなかった。
だが、それを現実として受け入れるのは…ごくごく普通の主婦である自分にとってはむずかしいことだった。
ありえない…それならなぜ、私は主婦なの?私に何ができるというの?
桂は立ち上がり、駅へ向かって歩き出した。
家で待っている夫と息子のために、早く帰らなければ。
ゆっくりと思い出して意味を感じ取る時間は今はないのだ。
帰りに夕飯の買い物もしなければならない。
明日は土曜日だけれど、翔太の部活があるから弁当も用意しなければならない。
22歳で就職し、25歳で結婚。27歳で翔太を産んで一年後に仕事に復帰し、毎日家事、仕事、育児を一生懸命こなしてきた。
ごくごく普通の、一般的な主婦なのだ。
その私がなぜこんな目に遭うのか…
桂は、パスを取り出し、改札に入った。
電車に乗り、家に帰る。
ラッシュ時の電車はかなり混むはずだが、金曜日の早い時間だからいつもよりも多少空いているかもしれない。
とにかく、今は考えるのをやめよう。これ以上歩きながら考えていると、頭がどうにかなりそう…そして、こんなときに「あれ」が起きたら本当に困る!!
桂は頭を切り替え、翔太のお弁当のおかずに入れるものと、夕飯の買い物リストを考えることにした。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。