宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

menu

宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

第一章 記憶の始まり14

「もともとこちらのサロンで退行催眠を受けたのは、さきほど皆さんが見たものと関連してます」
桂は年が開けてすぐの頃を思い出しながら話しはじめた。
そう…あれが始まったのは…天使を見、時間の感覚が狂いだしたのは正月に実家に帰省したときだった。
「今年の始めくらいから、何かの拍子にあの天使のような存在が現れるようになりました。最初はただ微笑んでいるだけで一瞬で現実に帰ってきたのですが…」
桂は思い出す。
「段々と、彼女…といる時間が長くなりました。そして、困ったことに、戻ってきたときに現実の世界ではまったく時間が経ってないんです」
「とても…混乱しました。気が狂ったのか、精神疾患か、脳の異常かも…とか」
桂は一息つくと3人の様子を見た。3人とも真剣に話を聞いてくれているようだった。
「特に、こちらのサロンにくる前がひどかったんです。仕事の説明を受けて、さぁやろう、と席に戻った瞬間に飛んでしまいました…そのままおそらく、一年近い時間が私の中では流れていたんです。でも…」桂は遠い目をした。あのときは本当に辛かった。今、生きているこの世界が果たして現実なのかどうか、一瞬自分自身の記憶でさえも定かでなくなってしまったのだから。
「この現実では、ほんの数秒しかたっていなくて。でも私は、受けた仕事の説明をすべて忘れていたんです。だから、何をしようとしていたのか、思い出すこともむずかしかった」
「その…一年近い時間が流れている間は、高木さんは何をしているんですか?」
篠崎が口を挟んだ。
「そうですよね、気になりますよね」
裕美が興味津々な顔つきで身を乗り出して聞いている。
「…そのときは…」桂は話そうかどうしようか戸惑い、そして3人の顔を順に見た。これを言ったら、頭がおかしくなった、と思われるかもしれない。それに…篠崎に自分の奇妙な体験を話しているのが嫌だった。せめて普通に出会えてたら…と心の片隅で思っている自分に、少し驚き、自分をいさめる。結婚して、中学生の子供もいる、篠崎よりもおそらく10歳前後は年上なのだ。彼にしたらおばさんでしかない自分なのだ…そういさめつつも、やはり彼にどんな印象を与えるかが不安だった。
「大丈夫です、高木さん」
篠崎は、桂を安心させるようににっこりと笑った。そして、桂の目を真直ぐに見た。その瞳の色が一瞬、ブルーに揺らいだような気がして桂は目を見張った。
「ここにいる3人は、おそらくそれなりに奇妙な体験をしてますから。もし心配でしたら、高木さんのお話の後に体験談でも披露しましょう」
確かに、裕美も新庄も、そして篠崎も、スピリチュアル系のことに知識が深く直感力に長けている。そして、何よりも今までに多くのクライアントに接してきているのだ…普通でない体験も多いのだろう。
桂は腹を決めた。1人の人にどう思われるか、を怖れるあまり、本当のことを話せないのでは解決に至れない。それでは、今までになぜ思い悩んできたのか…その時間が無駄になる。
「そのときは、私はおそらく地球にはいなかった…と思います」
「…どの惑星、とかわかりますか?」
「はい、あの天使のような人が教えてくれました。シリウスだと言っていました」
「シリウス!」裕美が手を打った。「ぁぁ〜!!!なんとなくわかるぅ〜!!!」若さが出ているなぁ、と桂は、裕美の相づちを冷静に捉える。
「シリウスでは何をしていたんですか?」篠崎が聞く。
「シリウスでは、彼らの生活を体感していました。彼らと寝食を共にしていたんですが、私の体はすごくなじんでて…」
「そうでしょうね、とでもいいたげに裕美が相づちを打つ。
「シリウスの生活はどんな感じなんですか?」
篠崎が先を進める。そのとき、新庄がボイスレコーダーを鞄から取り出した。
「高木さん、ここから先、すごく重要だと思うので…構わなければ録音させてもらいたいのですが」
「はい…この4人でのみ共用するなら構いません」
「ありがとう」新庄はお礼を言うと、録音スイッチを入れた。
「では、もう一度質問します。高木さん、シリウスでの生活について具体的に説明してください」
篠崎が録音スイッチが入ったことを確認してから、もう一度質問してきた。

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。