CATEGORY宇宙叙事詩
第一章 記憶の始まり4
あれから二週間がたった。恐れていた「あれ」は起きていない。 いや、正確にいえば、起きそうになるのだが起きる直前で止めることができるようになった。何回か止められるようになると自信がつき、対処可能と思えると恐れもなくなる。 桂の生活は変わらず…
第一章 記憶の始まり3
遅い夕食の片付けを終え、風呂に入る前に桂はナイターを見ている夫と息子にちらりと目をやった。 夫の修二は公務員で桂の二歳年上だ。高校の先輩後輩の中で、当時、修二は野球部のキャプテンだった。息子の翔太もその血を引き継いだか野球が好きで、中学で…
第一章 記憶の始まり2
めまいを感じ、桂は立ち止まって息を整えた。 夕刻になり、暑さは和らいだもののまだまだ蒸し暑い。そしてセッションの好転反応なのかだるく、歩くとすぐに軽い目眩がするのだ。 電車に乗る前に少し休もうと近くのカフェに入り、オレンジジュースを注文す…
第一章:記憶の始まり
夏の暑い昼下がり、高木桂はオフィス街を日傘もささずに歩いていた。 ここ数ヶ月、どうしてもどうしても気になることがあり、仕事が手につかなかった。 それをどのように掘り下げれば良いのかもわからず,悶々としていた所、ふと本屋で目に留まったのが「退…