宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

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宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

第一章:記憶の始まり

夏の暑い昼下がり、高木桂はオフィス街を日傘もささずに歩いていた。
ここ数ヶ月、どうしてもどうしても気になることがあり、仕事が手につかなかった。
それをどのように掘り下げれば良いのかもわからず,悶々としていた所、ふと本屋で目に留まったのが「退行催眠」の本だったのだ。
「これだったら、気になっていることの原因を探れるかもしれない…」
桂は早速、インターネットを使って退行催眠について調べ始めた。
ブライアン・L. ワイス博士の著作を読みあさり、ネットで退行催眠についての情報を集めた。
退行催眠CDや、ハイヤーセルフと会う為のCDも購入してみた。
夫に隠れてこっそりと聞いてみたが、心からリラックスしていない為か、あまり効果がなかった。
ネットで知り合ったヒーラーを通して、退行催眠をしている人何人かに催眠を受けてみたりもした。
だが、どれもしっくりこなかったのだ…そのため、一時は「しょせんこんなものか」と、距離を置くこともあった。
だが、そんなときに限って気になることはどんどんフォーカスされる。
目に飛び込んでくる様々な符合…それは街で、ネットで、テレビで、ラジオで…仕事中でも自宅にいるときでも、そして眠っているときにも「夢」という形でシンクロが襲ってくる。
桂は再び重い腰をあげた。
「これが最後」と心に決めて、退行催眠を施す人をネットで探し始めたのだ。
ホームページや施術者の顔写真から、「ピン!」と来た相手を選ぶことにし、膨大な検索結果から「これ」と心に響いたものだけをチェックし、そして…
ついに決めたのだった。
今日は、そのセッションを受ける為に会社を午後半休にした。
夫は桂が何をしているのかまったく知らない。
だから、いつも帰る時間…7時には家に帰っていないといけない。
「セッションして下さるヒーラーさんに、18時には終わるか確認しておこう。まぁ、14時に始めて4時間もかからないと思うけど…」
桂はバッグから地図を取り出した。
雑居ビルがひしめくあたりで、あまり癒しに関係するようなところには見えないが、今日セッションを受ける退行催眠のサロンはこおこにあるという。
ファーストフード店や居酒屋が軒を並べ、ゴミで汚れた歩道を歩きながら、桂は注意深くビルの名前を見ていった。
「あった、ここだわ」
MKビル、と書かれた薄汚れた5階建ての建物があった。エレベーターはなく、サロンは5階だった。
桂は近くの自販機で冷たく冷えた発泡水を買うと、階段を上り始めた。
階段は狭く急で、まるで螺旋階段のような気がしてきた。
5階にたどり着く頃には息もあがり、桂は体力不足を感じながらもサロンの前で買った発泡水を開け、ごくごくと飲んで汗を拭いた。
「なんだかオヤジくさくなったわ」と心の名kで苦笑しながら一息つき、サロンの呼び鈴を押した。
一呼吸おいてサロンの扉が開き、まだ若い女性が「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれた。
「虹に予約した高木です」と告げると、そのまま奥の部屋に通された。
サロンはそれほど広くはなく、2DKか2LDKか…という作りだった。
が、ビルの外観とは対照的に中はキレイに整えられ、クリスタルがあちらこちらに飾られていた。
女性は桂に席を勧めると、台所とおぼしきところへ姿を消した。お茶でも持ってきてくれるのだろう。
桂はサロンをよく見渡した。
全体がベージュと白を基調にしたインテリアで、隅の方にクリスタルファウンテンがある。
造花と生花が半々くらいで飾られ、可愛らしいガラスのテーブルにはエンジェルオラクルカードが重ねられている。
壁際一面に本棚があり、桂がまだ読んだことのない(でも興味がある)本が並んでいた。
「プリズム オブ リラ」
「プレアデスからのメッセージ」などなど…雑誌のスターピープルもあった。
桂はスターピープルを手に取り、何気なくぱらぱらとめくった。
そしてそこにも言葉のシンクロを感じ、慌てて閉じた。
「高木様、お待たせしました」
後ろから声をかけられ、慌てて振り向くとさきほどの女性がにこやかに立っていた。
年の頃は20代後半〜30代前半だろうか。自分よりは10歳くらい若いだろう、と桂は思った。
フワフワとした茶色い髪に大きなきらきらと輝く瞳、繊細そうな首の細さ、そして首から手首から、じゃらじゃらとつけられているたくさんの、紫を基調としたパワーストーン…
「あ、あなたが施術して下さる中川さんですか?」
桂は少し驚いていた。
ネットでみた写真と、イメージがすごく違うのだ。ネットに乗載っていた写真では、彼女の髪は短く、目の輝も薄かった。
「はい、中川裕美です。よろしくお願いいたします。」
裕美は深々と頭を下げた。桂も釣られて頭を下げる。
「どうぞお座りになってください」と、再び席を勧められ、桂は座り心地のいいベージュのソファに腰を下ろした。そっと手で撫でて「革かな?合皮かな?」とちらりと思う。
「セッションを始める前に、いくつか質問をさせていただいてもいいでしょうか」
「はい、もちろんです」
「今回、退行催眠を受けたい、と思われたのは、何か知りたいことがおありだから、ですよね?」
「はい、そうです」
「それについてはわたしは言及しませんが、高木様のお心のなかで「これについて知りたい」という強いお気持ちを持って頂いてもよろしいですか?」
「はい…わかりました」
「退行催眠は始めてですか?」
「いえ、何度か受けましたが、あまりぴんと来なくて…」
「そうでしたか。今日はどうなるか楽しみですね」
「はい、そうですね」
「今日の体調はいかがですか?退行催眠を受けると、一時的にぼーっとしてしまったり、気分が落ち込むこともありますし、体がだるくなることもありますが」
「はい、大丈夫です。良好です」
「恐いもの…例えば、暗やみ恐怖症、とか、閉所恐怖症、といったことはありますか?」
「いえ、ないです」
「わかりました」
裕美は立ち上がり、窓のカーテンを閉めた。
電気を消し、キャンドルに灯りをつける。
「それでは、こちらのソファに座って頂けますか?」
裕美は、退行催眠セッション用のソファに桂を座らせた。
リクライニングができるようになっていて、おそらくフットマッサージなどでも使えるのだろう。不フットレストも上下に動くようだった。
「これから始めようと思いますが、高木さんは必ずこの世界に帰って来ますので安心してくださいね。怖い、とか嫌だ、と思ったら、すぐに戻ってくることができます。わたしも高木さんの様子を見ながら行ないますので、様子がおかしかったらすぐにセッションをやめます。セッション終了後、もしシェアをしていただけるなら見た内容、感じた内容をシェアしていただければ、と思います」
裕美は立ち上がり、ソファをリクライニングさせた。
桂は、体が後ろに傾いて楽な姿勢になるのを感じ、リラックスしようと深く呼吸した。
「それでは、始めます…目を閉じて、ゆったりと呼吸していきましょう…」
裕美の誘導する声が暖かく、確かに桂を深層へと誘導していった。
目をつぶりながらもキャンドルの灯を感じていたはずが、桂はいつの間にか深い深い闇の中へ潜っていった。
遠のく意識の向こうで、裕美が「深層へダイブします…」という声がかすかに聞こえた。

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    • すー
    • 2010年 6月 08日

    SECRET: 0
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    すごい!!
    続きが楽しみ♪

    これは後々本にしては??

    • たま
    • 2010年 6月 08日

    SECRET: 0
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    や~~~ん!!!
    一気に読んじゃったよ~~!!!
    早く続き書いて❤

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