宇宙系チャネラー ☆ルカ☆

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第一章 記憶の始まり3

 遅い夕食の片付けを終え、風呂に入る前に桂はナイターを見ている夫と息子にちらりと目をやった。
夫の修二は公務員で桂の二歳年上だ。高校の先輩後輩の中で、当時、修二は野球部のキャプテンだった。息子の翔太もその血を引き継いだか野球が好きで、中学では当然のように野球部に入った。
まだ一年生だから雑用係だが、部活は楽しいらしい。
「お風呂入るね」桂は二人に声をかけるとタオルを持って脱衣所に行った。修二と翔太はナイターに夢中で生返事しか返さない。しかし今日はそれがありがたかった。
ぬるめの湯をはった湯舟につかり、桂は大きく息を吐いた。湯気に曇る天井を眺めながら今日のセッションを反芻する。
桂が催眠から目が覚めたとき、裕美は興奮と恐れが入り混じったような表情で「高木さん…内容覚えてますか?」と聞いてきたのだ。
すべて覚えていた。だがそれは自分の記憶として、というより映画を見ているような他人事の感覚だった。
「はい、覚えています、でも…」
「すごいですよ、高木さん…これはすごいことです!」
裕美は,桂の記憶がしっかりあることに更に興奮したらしい。
本来なら気になっていることの根本原因を探る為の退行催眠が、思わぬ展開になったのだから彼女のようにスピリチュアルなこと、目に見えない世界に夢中な人にはたまらない内容なのだろう。
「中川さん、ちょっと待ってください…私、正直混乱してます…」
桂は、裕美が興奮しているのを妙に冷めた目で見ていた。
確かに、興奮するのはわかる。でも、その当事者である自分はそれを飲み込めていないし、他人事だと思っているのだ。
裕美は、「ちょっとお茶を持ってきますね、私がまず落ち着かなきゃ…」と言いながら、うきうきした足取りで台所に消えた。すぐに冷えたお茶を持ってきてくれ、二人でそれを飲みながらセッションの内容をひとつひとつ確認したのだ。
正直、桂にとってそれはあまりにも…現実離れした、という以上の内容だった。
だって…シリウス?シリウスって何よ?
桂はのぼせそうになり、湯船を出た。
ボディソープを泡立てて体を洗いながらもセッションのことが頭を離れない。
銀河大戦争?アセンション?宇宙連合?
まるでSFだ。若い頃はSF小説も好きでよく読んでいたが、現実的な大人になると、実生活で役に立つ本に興味が移る。SFなんて、ここ数10年読んでいないのに…
他にもたくさんのキーワードがあり、裕美はそれを嬉しそうに書き留めていた。
レムリア、アトランティス、地球楽園計画、マルドゥク、DNA操作、アンドロメダ、評議会、白い宇宙、黒い宇宙…
まったく訳がわからなかった。
自分が退行催眠で話した内容とはいえ、こんな突拍子もない内容が自分の口から出たなんて信じられない。
しかし、その一方で、心の奥底でそれらのキーワードに深い確信もあるのだ。
何よりも「あれ」の時にみるあの景色は…今日のキーワードと深い関係があるような気がする。
髪を洗い終わると桂は再び湯船に体を沈めた。
湯船の中で足を下からゆっくりマッサージしながら、再びセッションを反芻する。
裕美は、次の予約はどうしますか?と別れ際に聞いてきた。
桂は正直迷った。
またこんな突拍子もない内容になるなら、お金を払うだけ無駄…という気がしつつも、今日の内容が遠からず根本原因のひとつであることも確信していたので、もっと深く知りたくもあったのだ。
また電話します…そういって、サロンを後にした。
裕美は、「必ずお電話くださいね」と名残惜しげに桂を見送った。
また受けて、そして今度は自分は何を言い出すのだろう。
桂はそれが恐くもあった。
自分が自分でなくなるような…もしかしたら妄想癖とか。現実と空想の世界の境目がなくなってしまうとか…悪い方に考え始めたら一気に気分が落ち込んだ。
息子が成人するまではまともでいたい…結婚式にでて、可愛いお嫁さんに少し意地悪だけど理解のあるお姑さんになって、孫だってこの手で抱きたいのに…
退行催眠を受け続けると、そんな些細な夢が壊されるような気がして恐くなった。
やめよう。もうなかったことにしよう。
桂は心を決め、風呂を出た。
リビングではまだ二人がテレビを見ている。
この些細だけれど大事なな幸せは、私がこのままでいれば変わることはないんだわ。
桂はそう思い、たとえ「あれ」が起きたとしても、もう色々と考えるのはやめようと思った。
「あれ」が起きることに恐怖はあるが、退行催眠とかヒーリング関係のセッションを受けるのはやめてちゃんとしたお医者さんのところに行こう。でも、どこを受ければいいのだろう?心療内科?精神科?そう考え始めるとまた気分が暗くなった。
とにかく、「あれ」が起こらないことを祈って、今日のことを考えるのはやめよう…目の前の幸せにだけ集中していこう、と思った。

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  1. SECRET: 0
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    「あれ」って??
    なになに~~???
    ホントにわくわくしちゃう~~(>_<)
    毎日絶好調、ありがとう~♪

    • たま
    • 2010年 6月 10日

    SECRET: 0
    PASS:
    ほんと、なになになに~~~??(笑)
    毎日嬉しいよ~!

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