3Jul
「やめてーーーーーーー!!!!!!」
桂は声にならない声をあげて叫んだ。
喉の奥で、自分の声がひりつくのがわかった。喉はからからに乾いて、声を出そうとしても声帯がまるでないかのように、ただ空気がもれるだけだった。
眩しい光が辺りを包み、桂はあまりのまばゆさに手で目を覆おうとした。だが、その手を通してもなお眩しい光は部屋中に溢れ出している。
その光の中心には、金色の髪、白いローブのような服を纏った、とても美しい「存在」がいた。ほほえみ、桂に向けて手を差しのべている。その「存在」は、容姿は人間にそっくりだったが、存在感が人間のそれとは全く異なっていた。
神聖で、愛に満ち、触れるものすべてを癒してしまいそうな存在…本来だったら、その存在に出合えることは夢であっても嬉しいことなのかもしれない。
だが、その男性とも女性ともつかない「存在」の姿こそが、ここ数ヶ月の間、桂を悩ませていたのだ。
まさかここで、「あれ」が起きるなんて…呼吸がどんどん荒く、短くなっていくのがわかる。
桂はなんとか目をそらせようと試みた。だが、まるで頭を固定されているかのように動かすことができず、目を閉じようにもそれは無駄な抵抗だと知るのみだった。
その「存在」は、桂にゆっくりと手のひらを向け、さらにまぶしい光を桂に向けようとした。
そのとき、「やめなさいって伝えなさい!!!」
遠くの方で、新庄の声がしたような、気がした。
桂は、意識が遠のくのを感じながら、「ぁぁ、またあの状態になるんだ…」とうっすらと思った。
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